作品評

来年度以降はどこを目指すか ―― 第3回新潟国際アニメーション映画祭を見て(後編)

前編に引き続き、第3回新潟国際アニメーション映画祭のコンペティション部門について述べる。 コンペ部門には、公式パンフレットによれば、28の国・地域から69本の応募があったという。これは第1回(21本)を大幅に上回る第2回の49本をさらに上回るもので…

長編アニメーション『ロボット・ドリームズ』 静かな話題の拡がりをどう考えるか

スペイン出身のパブロ・ベルヘルの脚本・監督作品、長編アニメーション『ロボット・ドリームズ』 公開から1ヶ月過ぎたが、単館のみならずシネコンを含め、上映が続いている。 端的にいえば、アニメファン向きの作品ではない。というか、海外制作の長編アニ…

長編アニメ『トラペジウム』を見て

今年の新千歳空港国際アニメーション映画祭で特別上映された長編アニメ『トラペジウム』 今年5月からの一般公開では見逃してしまっていた。ちょうどよい機会だと、新千歳で鑑賞したので、その印象を書いておく。 -----------------------------------------…

山田尚子監督『きみの色』を鑑賞して感じたこと

山田尚子監督の最新作『きみの色』が公開されて1ヶ月が過ぎた。本稿では、作品への直接の論評は控えめにしながら、作品を鑑賞して感じた諸事項を書いてみた。-------------------------------------------------------------------------------------- 手塚…

ひろしまアニメーションシーズン2024に参加して(後編)

ひろしまアニメーションシーズン2024、リニュアル後の第2回アニシズについて、前編に続き、上映作品や受賞作について述べる。章番号は前編からの連番になっている。 4)どんなコンペ作品が集まったか カンヌ国際映画祭に「ある視点」というカテゴリがある…

比類なき長編アニメーション映画祭 ―― 第2回新潟国際アニメーション映画祭を見て(後編)

3月15日~20日まで開催された第2回新潟国際アニメーション映画祭(新潟フェス)について、前編ではコンペティション部門への応募作が大きく増え、国際映画祭として高く評価できる点を書いた。 後編では、コンペ作について、具体的に述べてみたい。 全12作…

「大人向けのアニメ」の可能性 ーーー 長編アニメ『駒田蒸留所へようこそ』

今月初めに開催された第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭について、前編、後編の2回に分けて書いた。 その新千歳の長編コンペティションで上映された5本のうち、唯一の日本の長編アニメとして『駒田蒸留所へようこそ』が入った。受賞には至らなかっ…

82歳の新機軸 -- 宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』雑感

公開初日の夕刻の上映枠で、私は『君たちはどう生きるか』を見た。 細部に至れば物語の破断とも思える描き方はあったものの、一つの映画世界をしっかり構築していた。異なるコミュニティへ入った少年、その少年の「修行」時代、自身の存在の意味の模索など、…

映画のアイデンティティ

昨日、衝動的に映画『憧れを超えた侍たち』を見た。今年3月のWBC、野球日本代表選手らが選抜・招集され、アメリカとの決勝戦を制して世界一になるまでのドキュメンタリーである。私もWBCには「野球はこんなにも奥深く、筋書きのないドラマになり得る…

細田守監督『竜とそばかすの姫』 雑感

細田守監督の長編アニメは、これまで都市を基軸に舞台が創造されていた。 『サマーウォーズ』(2009)も『おおかみこどもの雨と雪』(2012)も、舞台の大半は田舎だが、映画の発端は都市である。『おおかみこども』では、主人公が子ども二人とともに大都市で…

今年の「新千歳」(2) アニメーションという大海に身を委ねた「Journey ; 旅路」―― 長編『Away』

今年の「新千歳」(1)に引き続き、ラトビアの長編『Away』について書く。 本作は、全体で4部に分かれている。 第1部は「オアシス」 冒頭、パラシュートで降下したと思える少年が巨木に引っかかっているシーンから始まる。周りは何もない荒野、そこに、巨…

今年の「新千歳」(1) 短編『Acid Rain』、『SHISHIGARI』、そして長編『Away』

11月1日から4日間開催された、第6回新千歳空港国際アニメーション映画祭、私は今年が3回目の参加となった。この映画祭の意義、独自性については、前年までのこのブログで書いたので、ここでは、会期中に見た作品で印象に残った作品をいくつか書いておき…

新海誠監督、私は怒りませんでした。

のっけから突飛なタイトルだが、最新作『天気の子』、公開初日に鑑賞した。 本当に素晴らしかった。 ほぼ1週間前、私の最新著書「新海誠の世界を旅する」(平凡社新書)が刊行された。 https://www.amazon.co.jp/dp/458285916X/ 新海監督のこれまでのほぼ全…

「新海節」の再認識 −−『秒速5センチメートル』爆音上映

11月2日から行われている第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭、順調に日程を消化している。 今回からコンペティション部門がさらに充実し、従来からのインターナショナルコンペティション、日本コンペティション、ミュージックアニメーションコンペテ…

『タンポポとリボン』 : 珠玉の短編アニメーション

長年、それも年間何百本も短編アニメーションを見ていると、1作1作への集中力や思い入れが薄まってくるし、惰性を感じることもあるけれど、これには参った。 若井麻奈美さんの最新作『タンポポとリボン』がそれである。 今年6月に発表され、私が知る限り…

稀にみる心地よさ −−石田祐康監督『ペンギン・ハイウェイ』

遅まきながら、見てきた。 しかし、私が今年見た長編アニメの中では文句なく最高作。もちろん私は今年公開の長編アニメを全部見ているわけではないので、あくまで「私の見た」ということではあるが、正直なところ、石田祐康監督がここまでの長編アニメを作る…

これぞ「映画」の真骨頂 :細田守監督『未来のミライ』

このブログの趣旨からすると、ちゃんと古今東西のアニメ文献のことを、しかももっと頻繁に書かなければならないのだが、やっぱりこれは書かずにはいられない、細田守監督の最新作『未来のミライ』 公開初日の夕刻からの上映を見た。それまでにはレビューや監…