2023-01-01から1年間の記事一覧

「大人向けのアニメ」の可能性 ーーー 長編アニメ『駒田蒸留所へようこそ』

今月初めに開催された第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭について、前編、後編の2回に分けて書いた。 その新千歳の長編コンペティションで上映された5本のうち、唯一の日本の長編アニメとして『駒田蒸留所へようこそ』が入った。受賞には至らなかっ…

大きく育った映画祭 ーーー 第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭を見て(後編)

第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭、前編に続くこの後編では、上映作品について具体的に書いていきたい。 といっても、たくさんあるプログラムを全部見るのは不可能なので、私は国際映画祭では、新作が集まりグランプリを競うコンペティションは全部…

大きく育った映画祭 ーーー 第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭を見て(前編)

第10回目の記念すべき開催となった新千歳空港国際アニメーション映画祭が、昨日閉幕した。私はコロナ禍の2年間を隔てて、今回が5回目の参加である。 旧・広島フェスが2022年から「ひろしまアニメーションシーズン」という映画祭に変わり、私から見ればひろ…

82歳の新機軸 -- 宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』雑感

公開初日の夕刻の上映枠で、私は『君たちはどう生きるか』を見た。 細部に至れば物語の破断とも思える描き方はあったものの、一つの映画世界をしっかり構築していた。異なるコミュニティへ入った少年、その少年の「修行」時代、自身の存在の意味の模索など、…

映画のアイデンティティ

昨日、衝動的に映画『憧れを超えた侍たち』を見た。今年3月のWBC、野球日本代表選手らが選抜・招集され、アメリカとの決勝戦を制して世界一になるまでのドキュメンタリーである。私もWBCには「野球はこんなにも奥深く、筋書きのないドラマになり得る…

ひろしま、新千歳、東京、そして新潟 ーー 第1回新潟国際アニメーション映画祭を観覧して(後編)

第1回新潟国際アニメーション映画祭について、長々と前編、中編と書いてきたが、最後のこの後編では、大会中に感じた課題、そして次回に向けての提言について書いていきたい。 まず、どうしても触れなければならないのは、コンペティションの観客の少なさで…

ひろしま、新千歳、東京、そして新潟 ーー 第1回新潟国際アニメーション映画祭を観覧して(中編)

前編で述べたように、コンペティションが行われるアニメーション映画祭では、公募対象を短編に加えて長編を扱うかどうかが一つの分岐点である。現在日本で開催されている新千歳、東京、ひろしまの3つはいずれも長編を対象に入れている。 次に、作品のタイプ…

ひろしま、新千歳、東京、そして新潟 ーー 第1回新潟国際アニメーション映画祭を観覧して(前編)

この3月17日から新潟国際アニメーション映画祭が開催された。会期は6日間にも及び、長編アニメ専門のコンペティションというユニークさが際立つ映画祭の、記念すべき第1回である。 日本開催の国際アニメーション映画祭は長らく広島国際アニメーションフェ…