第11回 新千歳空港国際アニメーション映画祭

 恒例の北海道・新千歳空港国際アニメーション映画祭、11月1日から5日にかけて開催された。やや遅くなったが、ここで印象をまとめておく。
 
 今回で11回目を数え、すっかり定着した感がある新千歳である。
 グランプリなどを決定するコンペティションから、特別上映、トークまで多くのプログラムが組まれているが、私はいつものように、コンペティション中心に鑑賞した。
 短編コンペは、「インターナショナルコンペティション」が4プログラム、ほかにファミリー向け作品を集めた「インターナショナルコンペティション・ファミリー」、日本作品を集めた「日本コンペティション」、学生作品を集めた「学生コンペティション」、ミュージックビデオを中心に集めた「ミュージックアニメーションコンペティション」がそれぞれ1プログラム、合計8枠にも及ぶ。
 全般的には、90の国と地域から出品された2043本の作品を事前選考して本選(映画祭)に送り込む選考委員らが、数年前からだいぶ入れ替わった影響が感じられた。たとえば、私くらいの世代なら、さほどの新しさを感じない作品であっても、選考委員には「新しさ」「アグレッシブさ」が感じられて本選に入ったのではないか、と思える作品が混じっていた。
 その印象が当たっているなら、それはそれで構わないと思う。過去に一つの潮流や影響を与えた作風がその後廃れ、時代が変わって再興することは、音楽でもイラストでも珍しくない。
 ただ、全般的にわかりやすい作品、つまりストーリー性に富み、キャラクターに親近感を覚えるタイプの作品が増えており、これは今年夏に開催されたひろしまアニメーションシーズン2024と同じ傾向であって、興味深いところだ。

 もう一つの、長編アニメを集めた「長編コンペティション」には、考えさせられた。
 本選に入ったのは6本で、このうち日本作品は『化け猫あんずちゃん』と『ルックバック』の2本である。
 一方、海外作品4本は、内容やタッチはさまざまながら、いずれもインディペンデント性、前衛性が強い作品ばかりだった。ここに上述の日本作品2本が入っているものだから、その2本が浮きまくってしまい、1枠のコンペティションとして、これで落ち着いて審査ができるものかと考えたのである。
 もともと新千歳の長編コンペは、日本作品が1本は入って、しかも娯楽性の高い作品が選ばれることが多い印象がある。昨年は『駒田蒸留所へようこそ』が入っていた。
 しかし、今年の長編部門では、結果的にきわめて前衛性の強い作品がグランプリに選ばれたので、その作品と『化け猫あんずちゃん』とを同列で審査するのは、不条理さえ感じる。
 公式パンフレットによると、新千歳の長編部門には全世界からおおむね40本台の作品が出品されており、これはここ数年変わらない。その中でも日本作品は、前回、前々回とも3本という少ない出品数だったものが、今回は10本にまで増えた。
 一つの在りようとして、長編も海外作品と日本作品とを分けて枠を設け、それぞれで受賞作を選定し、さらに全体からグランプリを選ぶようなことをするのはどうだろうか。

 最後に。今回初日から最終日まで映画祭会場に出入りする中で、気になる点があった。それは、映画祭の収益面である。収益面が「気になる」ことを感じさせる事象が1、2つあった。
 私は映画祭の収益についての知識は持ち合わせていないし、新千歳でのことも杞憂であってほしいが、以前から比較的商業系作品に理解のある新千歳は重要な存在であって、今後の発展を望みたい。