●「コマ撮りアニメーションの秘密」
著 者: オリビエ・コット
日本語版監修: 真賀里文子・野中和隆
出版社: グラフィック社
刊行年: 2008年
定 価: 3500円
アカデミー短編アニメーション賞を受賞した作家や関係者へのインタビューと多くの図版で構成された良書。その収録対象は13作品と少ないながら、古くはノーマン・マクラレンの『隣人』から、最近のものではマイケル・デゥドク・ドゥ・ヴィット『岸辺のふたり』、アダム・エリオット『ハーヴィ・クランペット』まで、こうしてみると実に多彩なラインナップになっている。
注目すべきは、単に巨匠への敬意をこめたインタビューという内容にとどまらず、作品の着想のためのスケッチや、作品制作途上の詳細な図版まで、実作者が見ても参考になるであろう内容が含まれていることだ。
参考までに、上記以外の作家・作品を挙げると、
『フランク・フィルム』(フランク・モリス)
『砂の城』(コ・ホードマン)
『ハエ』(フレンツ・ロシェフ)
『アンナ・ベラ』(ボルゲ・リング)
『木を植えた男』(フレデリック・バック)
『バランス』(クリストフ&ヴォルフガング・ラウエンシュタイン)
『マニピュレーション』(ダニエル・グリーブス)
『階段を降りるモナリザ』(ジョーン・C・グラッツ)
『クエスト』(タイロン・モンゴメリー)
『老人と海』(アレクサンドル・ペトロフ)
原著は2006年出版。タイトルは、「Secrets of Oscar-winning Animation Behind the scenes of 13 classic animations」となっていて、邦題とは異なる。「コマ撮りアニメーションの秘密」などと、微妙にわかりにくいタイトルにしなくてもよかったのにと思う。
とはいえ、280ページの大部の中に、アートとしてのアニメーションのエッセンスが密度濃く凝縮されている。値段は、数字だけ見るとやや高価だが、むしろお買い得というべきだろう。
カテゴリは、収録された全作品が海外作家なので、普通なら「海外事情」とすべきかもしれないが、作品制作の詳細が主な内容なので、「作品作家研究」とした。