現代漫画博物館

 
 ●「現代漫画博物館 1945-2005」
  編 者: 小学館漫画賞事務局
  出版社: 小学館
  刊行年: 2006年
  定 価: 4200円
 
 
 
 日本のアニメと漫画との密接な関係については述べるまでもなく、したがってアニメーション研究にあっては、漫画関連の文献に眼を通す機会が多い。
 私も、何人もの漫画研究者の知人・友人がいるが、どういうわけか、漫画研究者がアニメーション研究に興味を持つ度合いと、アニメーション研究者が漫画研究に興味を持つ度合いには、少なからず差があるような気がする。
 おおざっぱに言えば、アニメーション研究者が漫画研究に興味を持つ度合いは、逆の場合に比較して、かなり低い。これは、個々の研究者単位の度合いではなく、研究者群単位の傾向であって、つまり、漫画研究「にも」興味を持ち、アンテナを張っているアニメーション研究者の割合が少ない、ということである。
 
 さて、本書は、「別冊・資料編」を含む2冊から成り立っており、本巻には、戦後60年間の代表的漫画作品が、豊富なカラー図版とともに年代ごとに整理され、解説されている。総ページ数は約430ページ、図版入りで解説されている作品は約750作品におよび、膨大な戦後漫画作品の中からの選択作業の困難さ・厳しさを思えば、労作である。
 別冊は、本巻で取り上げられた漫画家の人名事典と漫画史年表が収録されている。人名事典は、生年(生年月日ではない)、生地、デビュー作、代表作といった基礎情報が整理されているが、本書執筆のためにあらためて作家たちに掲載情報の確認をとったとのことで、すでに生年月日が公表されたことがあるにも関わらず本書では明記されていない作家がいるなど、若干の不満はある。(こまかいことにこだわるようだが、例えばアニメーションの海外文献では、生年月日と生地、他界年月日と他界地まで掲載されているものがある)
 もちろん、索引は、作家別、作品別に掲載されている。
 
 若いアニメーション研究者の中には、「漫画研究の基礎知識もつけていかなければ」と考えている人が少なくないと思われるが、近年漫画研究の分野でかまびすしい表現論、社会学的アプローチといった切り口で成立した成果にいきなり眼を通しても、ついていけないということになりかねない。
 そこでまずは、本書のような、基礎的、体系的にまとめられた事典を手元に置き、疑問をもったらすぐにひもとけるようにしておくとよいだろう。