大きく育った映画祭 ーーー 第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭を見て(前編)

 第10回目の記念すべき開催となった新千歳空港国際アニメーション映画祭が、昨日閉幕した。私はコロナ禍の2年間を隔てて、今回が5回目の参加である。
 旧・広島フェスが2022年から「ひろしまアニメーションシーズン」という映画祭に変わり、私から見ればひろしまと新千歳とが似通ったポリシーで運営されるようになったため、新千歳の独自性が薄まったように思うこともある。
 しかし、今回参加して、新作がグランプリを競うコンペティション部門や話題作を上映する特別プログラム、トーク系イベントまで含めて、現在日本で最も充実した国際アニメーション映画祭に育ったと感じることができた。
 とりわけ、映画祭初期から、いわゆる芸術系の作品群と商業系の作品群とを並列で扱い、また短編だけではなく長編のコンペティションも創始するなど、アニメーションを広く捉えて上映する姿勢は、観客にとって魅力的だ。その結果、例えば今回では、まもなく公開される『駒田蒸留所へようこそ』が長編コンペティションに入った。
 過去には、古典的名作(たとえば『AKIRA』)の上映、京都アニメーションリズと青い鳥』上映と山田尚子監督の来場、また今回であれば『BLUE GIANT』の爆音上映と監督トークなど、その年の話題作を取り上げることも忘れない。


 ところで、今回の会期は11月2日から6日まで5日間。これまでの会期は4日間だったが、今回は10回の記念大会ということで1日増えた。
 それは良いのだが、ちょっと不満を述べると、最終日の11月6日は午前中に「受賞作上映」があるだけで、コンペなど重要なプログラムは5日までにすべて組み込まれている。これをもっと早くに公表できなかったのだろうか。そもそも、最終日は午前中にたった一つのプログラムがあるだけで、これで「5日間」が必要だったのだろうか。
 公式ホームページでのプログラム発表は10月5日で、開会まで1ヶ月を切っている。
 プログラムの詳細は直前にならないとなかなか公表できない事情は理解したい。しかし、各日の午前、午後、夜くらいの大まかな区分で、それぞれ「コンペティション」「特集上映」「回顧上映」といった概要での発表は、もう少し早い段階で可能なはずだ。
 私は、最終日の6日の夕刻くらいまで通常通りのプログラムが組まれると考え、1ヶ月以上前に航空券やホテルを予約した。そうすると、航空券もホテルも安くなる。
 結果として、私は最終日は何もやることがなく、まるで空いてしまった。しかしそれがわかった時点で航空券の予約をやり直そうとしても、予約変更不可の安いチケットなので、払い戻し手数料その他を勘案して、あきらめた。
 みみっちいことを書いているようだが、商用や研究用の「経費」として勤務先から旅費交通費を支給される身分とは違って、全部自腹の私からすれば、切実な問題なのだ。同じように考えながら旅程をつくろうとする参加者はいるだろう。

 

 というわけで、最終日の11月6日は会場には行かず、小旅行をすることにした。
 アニメとはまったく関係のない話になってしまうが、私は鉄道ファンでもあるので、滞在先の千歳からJR石勝線の特急に乗って車窓を楽しみながら、十勝のはずれにある新得へ向かった。新得は日本有数のソバの産地で、駅舎の中に立ち食いそばファンが絶賛する美味しい立ち食いそばの店がある。つまり、私は立ち食いそばファンでもある。
 ソバを食べ、駅周辺を少し散策して、千歳に戻った。
 後編では、今回の映画祭のコンペティションについて、具体的に書いていきたい。