世界名作劇場  斎藤博+宮崎晃

 
 フジテレビ系日曜日夜7時半、「世界名作劇場」と呼ばれたシリーズは、現在30歳以上の人であれば何らかの思い出があるだろうし、日本のテレビアニメ史から見ても決して外すことのできない重要なシリーズだが、残念ながら、これ1冊見れば研究基礎資料になりうるという文献は、おそらくない。
 それに名作劇場は、どうしても現在、『アルプスの少女ハイジ』、『母をたずねて三千里』、『赤毛のアン』といった作品がクローズアップされる機会が多く、これらはすなわち、高畑勲宮崎駿のコンビが手がけた作品である。
 そのこと自体はよい。いずれ劣らぬ名作である。
 しかし、高畑&宮崎(=ジブリ)という視点ではなく、あくまで「世界名作劇場」という脈列で見ることができる人は、『ペリーヌ物語』(1978)、『トム・ソーヤの冒険』(1980)、そして『牧場の少女カトリ』(1984)といった作品への評価がより高く、思い入れが深いのではないだろうか。
 そして、これらの作品を手がけたのが、演出:斎藤博、脚本:宮崎晃という、名作劇場を実質的に支えた名コンビ中の名コンビである。
 
 ●「斎藤博宮崎晃の世界」
  発 行: 赤毛同盟
  刊行年: 1997年
  同人誌
 
 
 
 世界名作劇場の同人誌を数多く出してきた赤毛同盟がまとめた資料集。
 A5判、全140ページというコンパクトな仕様ながら、斎藤博宮崎晃へのインタビュー、2人が関わった作品解説(宮崎晃が手がけた「男はつらいよ」シリーズなど実写作品についても言及)、テレビアニメ作品のサブタイトル一覧など、充実した内容になっている。
 斎藤博は、おとぎプロダクションから虫プロ東京ムービー作品等を経て世界名作劇場に関わるという、日本のテレビアニメ草創期からのキャリアをもち、宮崎晃は、知名度が低く1年間のシリーズにはなり得ないと思われていた原作(たとえば『ペリーヌ』『カトリ』)を、このシリーズ屈指の名作に仕立て上げた張本人である。
 しかし、雑誌「アニメージュ」などに単発的なインタビューは掲載されたことはあったが、2人のコンビとしての業績をまとめたという意味で、この資料集は貴重だ。
 
 もっとも、あくまで同人誌であり、サークル同人の筆による雑記的な文章も多く、研究資料として100%役立つ内容ではないが、これはやむを得ない。
 それでも、日本のテレビアニメ史の中で、この名コンビに光を当て、再評価する重要性を指摘したいと考え、ここに紹介することにした。
 
 現在、入手困難。まんだらけ等で忍耐強く探すしかない。
 
 なお、世界名作劇場を制作したプロダクション「日本アニメーション」設立25周年を記念して出版された以下のようなムックがあるが、残念ながら内容は「写真集」であり、研究に必要な基礎的情報はあまり掲載されていない。
 ただ、こちらは比較的入手容易なので、一応眼を通しておきたい。
 
 「25周年記念 日本アニメーション全作品集」
  構成・編集: 株式会社アネックス
  発 行: プラネット出版
  刊行年: 2001年