アニメ大好き!

 
 ●「アニメ大好き!」
  編 者: 池田憲章
  出版社: 徳間書店
  刊行年: 1982年
  定 価: 980円
 
 
 
 最近、大学などでアニメ史を教えていて痛感するのだが、例えば『機動戦士ガンダム』について、「思い入れもないし、なぜエポックになったのか、わからない」という学生は多い。
 現在20歳前後の学生にとってみれば、『ガンダム』第1作は、彼らが生まれるよりも遥か前の作品であり、考えてみれば、やむを得ない。
 そういうなかで、本書は、いわゆるアニメブームの熱気を伝える、密度の濃い内容で、一読する価値がある。
 
 サブタイトルに「ヤマトからガンダムへ」とあるように、1977年の『宇宙戦艦ヤマト』劇場版に端を発するブームを中心として、『マジンガーZ』、『勇者ライディーン』、『無敵超人ザンボット3』などを発端とする巨大ロボットものから『ガンダム』以降の富野アニメへの系譜、『銀河鉄道999』を中心とする松本零士アニメ、『アルプスの少女ハイジ』など名作アニメ、そして当時はまだ一部のファンを除いて知名度が低かった宮崎駿の『未来少年コナン』や『ルパン三世カリオストロの城』まで、当時のアニメ事情をよく伝えている。
 「アニメブーム」と言われたわりには、こういう、真面目で盛りだくさんの本は、意外に少ない点でも貴重である。
 
 ただし、俗に言われる「自分語り」的な筆致の文章が少なくないことと、作品内容についてかなり細かい言及が成されているために、作品を知らなければ何を書いているのかがわからない。
 今の若い人が本書を読みこなすには、それなりの知識とリテラシーが必要だろう。
 また、男の子向けのアニメばかりが取り上げられ、『キャンディ・キャンディ』など少女漫画原作ものや魔法少女シリーズなど女の子向けアニメへの言及がほとんどないことも弱点。
 
 古書市場のみの流通で、入手はやや困難。