自著 「日本初のアニメーション作家 北山清太郎」

 
 このブログでは、原則として私的なことは書かないことにしており、その延長として、自著のことは書かないつもりにしているのだが、少しタイムリーな話題でもあるので、お許しいただきたい。
 
 ●「日本初のアニメーション作家 北山清太郎」
  著 者: 津堅信之
  出版社: 臨川書店
  刊行年: 2007年
  定 価: 2520円
 
 
 
 1917(大正6)年、国内最初期のアニメーションを制作した北山清太郎の評伝。北山のアニメーション関連の業績を中心として、彼の生涯の全貌を明らかにしたものである。
 
 1917年には、偶然にも3人のクリエイターが、それぞれ独立にアニメーションの国産を実現した。その3人とは、下川凹天、北山清太郎、幸内純一である。
 しかし、彼らの作品はほとんど現存せず、私も、当時の文献を精査し、また遺族を訪ね歩いて調査するしかなかった。
 ただ、少ないながらも、当時の映画雑誌などには記録が残っており、また北山清太郎のご遺族や、北山とともに仕事をした方にもたどり着くことができた。それらの調査結果をもとにして、本書を執筆することができた。
 
 調査の中核になったのは、参考書も指導者もないなかで、北山がどうやってアニメーション制作法を身につけ、かつ、初期のアニメーションはどのような手法で制作したのか、という点である。
 残念ながら、不明・調査不可能な点も多く残ったが、北山の試行錯誤の状況はかなり克明に再現し、それを専門家以外の、アニメーションに興味をもつ人たちにもわかりやすくなるように解説したつもりである。
 
 そして、記憶に新しいが、3月末、東京国立近代美術館フィルムセンターから、驚くべき発表があった。
 1917年、まさに国産最初期のフィルムが発見されたというのである。
 発見されたのは、幸内純一の第1作『なまくら刀』と、この北山清太郎が翌1918年に制作した『浦島太郎』である。
 これらの作品を含む貴重な作品が、いくつかのプログラムに分けられ、4月24日から、フィルムセンターで上映が始まっている。
 初日の24日には、『なまくら刀』と『浦島太郎』が上映され、私も深い感銘とともに作品を鑑賞した。
 5月11日には再上映があるので、日本のアニメーション史に少しでも興味のある人は、ぜひ足を運んでもらえればと思う。私のプロフィールページでも書いたが、アニメーション研究では、何よりもまず作品を見ることに始まる。
 そして、そのガイドとして、本書を携えていただければ、これに勝る喜びはない。
 
 ▼フィルムセンターの当該ページ
 http://www.momat.go.jp/FC/NFC_Calendar/2008-05/kaisetsu.html