「TVアニメ25年史」 「劇場アニメ70年史」

 編 者: アニメージュ編集部
 出版社: 徳間書店
 刊行年: 1988年、1989年
 
 
 
 「劇場アニメ70年史」は翌年刊行となったが、実質2巻セットの作品事典で、先に紹介した「日本アニメーション映画史」に次ぐ、日本アニメーション研究の基本図書の一つ。
 どちらも、A4判タテの判型で、1ページを4区分し、1区分で1作品を紹介している。掲載されている1作品あたりの情報は、画像1点、公開年月日または放映年月日、あらすじ、作品解説、スタッフ名が基本で、限られた紙面を最大限活用して、充実した内容となっている。
 
 「TVアニメ」は、文字通り『鉄腕アトム』(1963)以降から刊行年に至るテレビアニメを扱っているが、掲載第1作品は『アトム』ではなく、前々年におとぎプロダクションが制作した『インスタント・ヒストリー』になっているあたり、実質的な編集長を務めた、完璧主義の原口正宏らしい。
 「劇場アニメ」のほうは3部に分かれ、第1部は大正時代から東映動画設立前後(昭和32年)までで、執筆担当は「日本アニメーション映画史」の渡辺泰。ただし、この年代の全作品ではなく、代表的な作品を掲げるにとどまっている。
 第2部は昭和33年から刊行年までで、担当は「TVアニメ」と同様。
 第3部は「余禄」とも言うべき内容で、ニュース映画館時代や自主上映活動などが総説的に扱われている。担当は、おかだえみこ
 
 テレビアニメについても網羅的に扱っているため、刊行時は、「日本アニメーション映画史」を補完する貴重な文献として登場し、その価値は現在でも決して失われていないが、言うまでもなく、日本のアニメは、この2冊刊行後20年の諸事項もすでに分厚く、今となっては、この2冊だけでは追いつかない。
 また、「TVアニメ」のほうの、特に『機動戦士ガンダム』以降の作品の解説には、刊行当時ならではの事情・筆致が少なくなく(例えば当時人気のアニメーターや演出家の「初仕事」情報など、今となっては重要性の低い内容が多く盛り込まれている)、今読んでみると、事情を知らない人には理解しがたい部分もあるかもしれない。
 誤記・誤植もちらばっているので、他の文献も併用しつつ、活用する必要がある。
 
 しかし、「日本アニメーション映画史」ではモノクロ画像しか掲載されていないという弱点を完全に克服し、ほぼすべての掲載作品について、1点ながらもカラーの作品画像(もちろんモノクロ時代の作品は別)を掲載している点は大変素晴らしく、大手出版社ならではの成果である。
 
 この2冊も絶版になって久しく、入手は「日本アニメーション映画史」以上に困難となっている。
 古書店でも、まんだらけのような専門店でたまに見かける程度で、価格も1冊あたり5000円以上(定価は「TVアニメ」2980円、「劇場アニメ」2680円)と決して安くないが、アニメ文献に強い古書店をこまめに廻り、また古書検索サイト「日本の古本屋」を定期的に根気強く検索し続けるなどして、ぜひ入手しておくべきである。