Full Length Animated Feature Films

 
 著 者: Bruno Edera
 出版社: Focal Press
 刊行年: 1977年
 
 
 
 かなり古くなったが、タイトルのとおり、世界長編アニメーションの総説。
 著名なアニメーション史研究家、ブルーノ・エデラによる名著である。
 
 長編アニメーションと言えば、アメリカと日本が大国だが、もちろんそれ以外の国でも制作されている。特に、近年再び優れた長編アニメーションが制作されるようになり、日本でも人気のあるフランスや、過去の名作がDVD化されているロシア(ソビエト)などの、戦前からの長編アニメーション事情も、本書で知ることができる。
 基本的な構成は、各国の概説と作品リストで、約200ページのうち半分を作品リストが占める。そのリストも、タイトル(原題と英語タイトル)、制作年、長さ、主要スタッフ(監督、プロデューサー、アニメーター、音楽など)、そしてあらすじまで書かれてあるため、非常に参考になる。
 
 日本の作品としては、『白蛇伝』以降の東映動画作品、『展覧会の絵』を含む虫プロ作品、そしておとぎプロダクションの『おとぎの世界旅行』なども収録されている。
 もっとも、日本の概説の項を読んでみると、細かい点では誤りがあるし、藪下泰司のことを「しばしば日本のウォルト・ディズニーといわれる」などとあって、ほんとかよと思う内容もないではない。
 初の長編らしい長編『桃太郎 海の神兵』については触れられていないが、本書の刊行当時日本でもプリントが行方不明で忘れられかけていたのだから、これはやむを得ない。
 
 その他、長編か否かがやや疑問視されているが、世界初の長編アニメーションとされる『使徒』(Q.クリスティアーニ監督、アルゼンチン、1917年)も収録されている。
 
 もちろん、刊行時点の1970年代中ごろまでの情報なので、これ以後の状況については他の文献をあたる必要があるが、図版豊富でリストも充実しているので、長編アニメーション史研究の基礎文献として、現在でも活用度は高い。
 
 古い本だが、ブックファインダーで検索するとたくさん出てきて、おおむね2000円前後から購入可能なようだ。