「アニメポケットデータ2000」 「日本のアニメ全史」

 比較的最近出版された国内アニメ通史文献を2つ紹介する。
  
●「アニメポケットデータ2000」
 編 者: リスト制作委員会
 出版社: 徳間書店
 刊行年: 2000年
 
 
 
 徳間書店「TVアニメ25年史」「劇場アニメ70年史」以来、久々に登場した作品事典。といっても、B6判180ページあまりというハンドブック仕様で、図版は皆無ながら、テレビ作品、劇場作品、ビデオ作品ごとに、作品名、放映年月日(劇場作品は公開年月日、ビデオは発売年月日)、制作会社、そして演出と作画スタッフ1名ずつが、細かい字でズラリと、そしてギッシリとリスト化されて掲載されている。
 多くの略号を使って、限られた紙面に最大限の情報量を盛り込もうという編集なので、本書を使いこなすには、やや熟練を要するかもしれない。
 そして、早くも刊行から8年が経ってしまった。
 このテの通史は、少なくとも10年に1度は刊行する必要がありそうだ。
 
 
●「日本のアニメ全史」
 編著者: 山口康男
 出版社: テン・ブックス
 刊行年: 2004年
 
 
 
 元東映アニメーション演出家による、日本のアニメ通史。
 実は、拙著「日本アニメーションの力」とほぼ同じ時期に刊行されたため、勝負やいかに、と思ったが、本書は英仏伊のほか中国語、韓国語にも翻訳されているらしく、韓国語訳のみの拙著は完敗。
 それに、本書の最大の特色である、カラー図版が満載されている点でも、敗北を喫した。
 ただし、商業アニメ史しか言及していない点、全般的に極めてざっくりした筆致で、元東映動画という著者のアドバンテージが活かしきれていない点など、内容面では不満が多い。できれば、拙著「日本アニメーションの力」のように、多少強引にでも筆者・山口氏ならではの歴史観を盛り込んで執筆してほしかった。
 初学者への通史という面でも、ところどころ「誤り」と断じてもよい内容(例えばデジタルアニメーション史)もあるので、注意を要する。
 
 「日本のアニメ全史」は現在でも普通に購入可能だが、「アニメポケットデータ2000」は古書のみ入手可能で、しかもあまり見かけない。私も新刊で買い損ねてしまったので、たしかヤフオクで買った記憶がある。