近況

比類なき長編アニメーション映画祭 ―― 第2回新潟国際アニメーション映画祭を見て(後編)

3月15日~20日まで開催された第2回新潟国際アニメーション映画祭(新潟フェス)について、前編ではコンペティション部門への応募作が大きく増え、国際映画祭として高く評価できる点を書いた。 後編では、コンペ作について、具体的に述べてみたい。 全12作…

比類なき長編アニメーション映画祭 ―― 第2回新潟国際アニメーション映画祭を見て(前編)

3月15日~20日まで、第2回新潟国際アニメーション映画祭(新潟フェス)が開催された。 昨年の第1回では、世界的にも非常に珍しい長編アニメ専門の国際アニメーション映画祭ということで注目を集めた。第1回の論評もこのブログで書き、その最後に、国際映…

「大人向けのアニメ」の可能性 ーーー 長編アニメ『駒田蒸留所へようこそ』

今月初めに開催された第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭について、前編、後編の2回に分けて書いた。 その新千歳の長編コンペティションで上映された5本のうち、唯一の日本の長編アニメとして『駒田蒸留所へようこそ』が入った。受賞には至らなかっ…

大きく育った映画祭 ーーー 第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭を見て(後編)

第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭、前編に続くこの後編では、上映作品について具体的に書いていきたい。 といっても、たくさんあるプログラムを全部見るのは不可能なので、私は国際映画祭では、新作が集まりグランプリを競うコンペティションは全部…

大きく育った映画祭 ーーー 第10回新千歳空港国際アニメーション映画祭を見て(前編)

第10回目の記念すべき開催となった新千歳空港国際アニメーション映画祭が、昨日閉幕した。私はコロナ禍の2年間を隔てて、今回が5回目の参加である。 旧・広島フェスが2022年から「ひろしまアニメーションシーズン」という映画祭に変わり、私から見ればひろ…

82歳の新機軸 -- 宮崎駿監督『君たちはどう生きるか』雑感

公開初日の夕刻の上映枠で、私は『君たちはどう生きるか』を見た。 細部に至れば物語の破断とも思える描き方はあったものの、一つの映画世界をしっかり構築していた。異なるコミュニティへ入った少年、その少年の「修行」時代、自身の存在の意味の模索など、…

映画のアイデンティティ

昨日、衝動的に映画『憧れを超えた侍たち』を見た。今年3月のWBC、野球日本代表選手らが選抜・招集され、アメリカとの決勝戦を制して世界一になるまでのドキュメンタリーである。私もWBCには「野球はこんなにも奥深く、筋書きのないドラマになり得る…

ひろしま、新千歳、東京、そして新潟 ーー 第1回新潟国際アニメーション映画祭を観覧して(後編)

第1回新潟国際アニメーション映画祭について、長々と前編、中編と書いてきたが、最後のこの後編では、大会中に感じた課題、そして次回に向けての提言について書いていきたい。 まず、どうしても触れなければならないのは、コンペティションの観客の少なさで…

ひろしま、新千歳、東京、そして新潟 ーー 第1回新潟国際アニメーション映画祭を観覧して(中編)

前編で述べたように、コンペティションが行われるアニメーション映画祭では、公募対象を短編に加えて長編を扱うかどうかが一つの分岐点である。現在日本で開催されている新千歳、東京、ひろしまの3つはいずれも長編を対象に入れている。 次に、作品のタイプ…

ひろしま、新千歳、東京、そして新潟 ーー 第1回新潟国際アニメーション映画祭を観覧して(前編)

この3月17日から新潟国際アニメーション映画祭が開催された。会期は6日間にも及び、長編アニメ専門のコンペティションというユニークさが際立つ映画祭の、記念すべき第1回である。 日本開催の国際アニメーション映画祭は長らく広島国際アニメーションフェ…

新刊 「日本アニメ史」(中公新書)刊行のお知らせ

このたび、私の新著「日本アニメ史」(中公新書)が刊行されました。奥付では4月19日刊行ですが、書店にはすでに週末から並んでいたようです。 www.amazon.co.jp 1917年、日本で初の国産アニメーションが公開されてから現在までの日本アニメ通史ですが、年…

細田守監督『竜とそばかすの姫』 雑感

細田守監督の長編アニメは、これまで都市を基軸に舞台が創造されていた。 『サマーウォーズ』(2009)も『おおかみこどもの雨と雪』(2012)も、舞台の大半は田舎だが、映画の発端は都市である。『おおかみこども』では、主人公が子ども二人とともに大都市で…

近況(仕事、その他)

またまた長いことこちらで書いておらず、不活性なブログになっていますが、このブログの連絡先を使って仕事の依頼をいただくことも多く、感謝いたします。 少しわかりにくいですが、左上の「プロフィール」に表示の「tsugata」をクリックいただければ別ペー…

ラトビアの長編アニメーション『Away』日本公開決定

たいへんうれしいニュースである。 私は昨年の新千歳空港国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門での上映で見て、その斬新にして静謐な映像に大いに感動した『Away』、このブログでも2回に分けて紹介と論評を書いた。 ただ、やはり昨年の東京…

近況(広島フェスの今後について、など)

あまりにも長期間、記事をアップしていないので、近況を少し書く。 コロナ禍でアニメ界もさまざま影響を受けているが、先週末(9月26日・27日)には、3月開催予定だった「東京アニメアワードフェスティバル2020」のノミネート作品上映会が池袋・新文芸坐で…

今年の「新千歳」(2) アニメーションという大海に身を委ねた「Journey ; 旅路」―― 長編『Away』

今年の「新千歳」(1)に引き続き、ラトビアの長編『Away』について書く。 本作は、全体で4部に分かれている。 第1部は「オアシス」 冒頭、パラシュートで降下したと思える少年が巨木に引っかかっているシーンから始まる。周りは何もない荒野、そこに、巨…

今年の「新千歳」(1) 短編『Acid Rain』、『SHISHIGARI』、そして長編『Away』

11月1日から4日間開催された、第6回新千歳空港国際アニメーション映画祭、私は今年が3回目の参加となった。この映画祭の意義、独自性については、前年までのこのブログで書いたので、ここでは、会期中に見た作品で印象に残った作品をいくつか書いておき…

小さな扉から見える世界の風景 -- 第15回吉祥寺アニメーション映画祭

毎年恒例の吉祥寺アニメーション映画祭、今年で15回目を迎えた。私は初回以来、出品作のノミネートを行う選考委員と、本選の審査委員とを務めている。 アニメーション映画祭とはいっても、出品作品数は多くて100本前後、今年は65本だった。吉祥寺(武蔵野市…

新海誠監督、私は怒りませんでした。

のっけから突飛なタイトルだが、最新作『天気の子』、公開初日に鑑賞した。 本当に素晴らしかった。 ほぼ1週間前、私の最新著書「新海誠の世界を旅する」(平凡社新書)が刊行された。 https://www.amazon.co.jp/dp/458285916X/ 新海監督のこれまでのほぼ全…

連絡先について

特に記事をアップすることなく月日が過ぎてしまっています。 そのためか、このページが検索結果から見えにくくなっているようで、連絡先としての機能が不十分になってしまっています。 プロフィール欄にある「id:tsugata」をクリックして、たどっていってい…

はてなブログへ移行

投稿したりしなかったりのブログですが、ずっと使っていた「はてなダイアリー」のサービス終了ということで、はてなブログへ移行しました。 トップページから、私が作成した「カテゴリー」の一覧をどう表示すればよいのかとか、まだわかりません。これを含め…

ますます「雄弁」な映画祭 −− 第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭

新千歳映画祭開催の前夜、私は札幌・すすきののバーで飲んでいた。この店には以前にも来たことがある。マスターが「お仕事ですか?」と訊いてくれたので、「新千歳空港で明日からアニメーション映画祭があるんですよ」と言ってみた。 マスターと、もう一人の…

「新海節」の再認識 −−『秒速5センチメートル』爆音上映

11月2日から行われている第5回新千歳空港国際アニメーション映画祭、順調に日程を消化している。 今回からコンペティション部門がさらに充実し、従来からのインターナショナルコンペティション、日本コンペティション、ミュージックアニメーションコンペテ…

『タンポポとリボン』 : 珠玉の短編アニメーション

長年、それも年間何百本も短編アニメーションを見ていると、1作1作への集中力や思い入れが薄まってくるし、惰性を感じることもあるけれど、これには参った。 若井麻奈美さんの最新作『タンポポとリボン』がそれである。 今年6月に発表され、私が知る限り…

稀にみる心地よさ −−石田祐康監督『ペンギン・ハイウェイ』

遅まきながら、見てきた。 しかし、私が今年見た長編アニメの中では文句なく最高作。もちろん私は今年公開の長編アニメを全部見ているわけではないので、あくまで「私の見た」ということではあるが、正直なところ、石田祐康監督がここまでの長編アニメを作る…

第17回広島国際アニメーションフェスティバル 論評

表題の記事、ウェブ「アニメーションビジネス・ジャーナル」に寄稿しました。かなり長くなり、前・後編に分かれています。 今回は、関係者にいろいろ取材した上で書いたのですが、全般的に私の意見が「こうだ」ということよりも、この記事の内容を踏み台にし…

広島国際アニメーションフェスティバル開催にあたって

映画祭公式ページ: http://hiroanim.org/ ほぼ1週間後、恒例の広島国際アニメーションフェスティバルが開催される。1985年の第1回からおおむね2年ごとに開催され、今年は17回目を数える。 日本で唯一の国際アニメーション映画祭として歴史を刻み、役割を…

これぞ「映画」の真骨頂 :細田守監督『未来のミライ』

このブログの趣旨からすると、ちゃんと古今東西のアニメ文献のことを、しかももっと頻繁に書かなければならないのだが、やっぱりこれは書かずにはいられない、細田守監督の最新作『未来のミライ』 公開初日の夕刻からの上映を見た。それまでにはレビューや監…

高畑勲監督 死去

高畑勲監督が、4月5日、死去した。82歳。 アニメ界に大きな足跡を残した監督であり、今後さまざまな形で語られ、語り継がれていくだろうが、その大きな足跡から、2つの作品について書きとめておきたいと思う。 1976年に放映され、高畑勲が監督したテレビ…

引き算のやり方を覚え、引き算を恐れないこと :「GEIDAI ANIMATION 09 oh!」

公式HP: https://www.geidai-animation-09.com/ 恒例となった東京藝術大学大学院アニメーション専攻の院生たちの作品発表会、今年は「GEIDAI ANIMATION 09 oh!」というキャッチフレーズで行われた。 最近は多様性もあり、かつ驚くほど「毎年違う」ことが…