広島国際アニメーションフェスティバル開催にあたって

映画祭公式ページ: http://hiroanim.org/
 
 ほぼ1週間後、恒例の広島国際アニメーションフェスティバルが開催される。1985年の第1回からおおむね2年ごとに開催され、今年は17回目を数える。
 日本で唯一の国際アニメーション映画祭として歴史を刻み、役割を果たしてきたが、近年はその位置づけにも変化が生じている。新千歳や東京(TAAF)などでもコンペティションを有するアニメーション映画祭が開催されるようになり、また国際的にも映画祭の勢力図の変化があって、広島フェスの役割がますます問われるようになったからである。
 私は、海外の映画祭への参加経験はごくわずかしかない。しかし広島には、1987年の第2回大会から欠かさず参加しており、その歴史や変化、意義や課題などに触れてきた。
 
 今回の広島での最大の「話題」は、またしても日本人作家の作品がコンペに1本も入らなかったことである。4年前の第15回大会で史上初めて日本ゼロになって、あのしらけた空気がまた蔓延するのかと思うと、今から気が重くなる。
 正確に言うと、今回は、昨年アカデミーへのノミネートで話題になった『ネガティブ・スペース』が入っており、共同監督の一人はアメリカ在住の桑畑かほる(Ru Kuwahata)さんである。しかし、本作の制作国はフランスで、桑畑さんのパートナー、マックス・ポーター(Max Porter)さんとの共作である。
 また、コンペに入った全75作品のうち、制作国別の一覧表では日本作品が1本だけ入っているが、これは中国からの留学生の作品である。(東京藝大院での修了制作のため、制作国は日本となる)
 
 もはや2018年、国境や国籍の概念も変わり、アーティストは作品制作の機会を求めて世界中を渡り歩く時代なので、アニメーションの世界でも純然たる「日本」にこだわるのはナンセンスだという現況は理解できる。
 しかし、一般の観客にとって、映画祭とは文字通り「お祭り」であり、楽しみやワクワク感がなければ参加する意義が半減する。
 前回大会のコンペでは、日本人のベテラン作家から学生作家まで7本も入り、うち3本が受賞したのだから、コンペの上映時も授賞式でも映画祭らしい盛り上がりを見せた。そのことを思い返せば、やはり今回は開催前から気の抜けた雰囲気を感じるのは、私だけではあるまい。
 なにより、毎年数100本単位で国内外の短編アニメーションを見ている私としては、日本人作家の作品が諸外国に劣っているとはまったく思えない。
 
 私は今回も全日程に参加し、私なりに取材をして、国際アニメーション映画祭の日本開催の意味、広島フェスの価値を問い、このブログ以外でも公式的に書くつもりだが、ポイントは、世界中のほとんど誰もが認めるであろうアニメ大国・日本にあって、1985年の初回以来実に30年以上も開催されているにも関わらず、関係者や一部のファン以外にはいまだに知名度が低い広島フェスとはいったい何か、である。あまり話題に上らないが、地元の広島での認知度も実は高くない。
 さきほどチラッと書いた、諸外国と日本との短編アニメーションの違いについても、記事で触れたいと思っている。
 第17回広島国際アニメーションフェスティバルは、8月23日から5日間、開催される。