アニメ・マシーン

●「アニメ・マシーン −グローバル・メディアとしての日本アニメーション
 著 者:トーマス・ラマール(藤木秀朗・大粼晴美 共訳)
 出版社:名古屋大学出版会
 刊行年:2013年
 定 価:6,804円
 

 
 先日、日本アニメーション学会の年次大会が終了した。アニメーションの「学会」など、普通の生活をしていたら一生関わりがないだろうし、アニメのいわゆる研究や批評をやっている立場でも、縁のない人が多いだろう。
 会員は主に大学で研究・教育に従事している人たちだが、どういう成果が出されているのか。たとえば、アニメ監督の作家性とか、作品分析とか、アニメの歴史とか、そういう「らしい」テーマが取り上げられることはもちろん多いのだが、その研究のベースとして、ここ数年きわめて顕著なのが、イギリス発祥のカルチュラル・スタディーズの強い影響下にある研究、そして哲学や文化人類学などの海外の理論を発端としたアニメ研究である。
 「ラカンと言われても、ぼくは羅漢しか知らないので」とは、何年か前の(アニメーション学会ではなく)マンガ学会大会のシンポジウムでの夏目房之介さんのジョークだが、私も似たような認識なので、最近の海外潮流の影響下にあるアニメ研究は、勉強にはなるけれど戸惑いも少なくない。内容や方法論以前に、海外の潮流を踏まえないとアニメ研究ではない、と怒られることさえあるからである。
 しかし、作品を客観化するあまり、さらに横糸として海外の理論を入れ込むあまり、伝統的なアニメ研究者から見れば深刻な誤解を含む、あるいはケアレスミスとも言うべき誤りを含んだままで進められている研究が少なくないと映るのである。
 グローバルの名の下での、近年の学会におけるそうしたアニメ研究が、いわば「応用アニメ研究」だとすれば、「基礎アニメ研究」とはいったい何なのか。問い直してみるのも悪くない。
 トーマス・ラマールの「アニメ・マシーン」は、そうした近年のアニメ研究に絶大な影響を与え続けている著書である。