アメリカで日本のアニメは、どう見られてきたか?

 
 ●「アメリカで日本のアニメは、どう見られてきたか?」
  著 者: 草薙聡志
  出版社: 徳間書店スタジオジブリ事業本部
  刊行年: 2003年
  定 価: 1800円
 
 
 
 東映動画長編第1作の『白蛇伝』、テレビアニメ『鉄腕アトム』や『マッハGoGoGo』など初期作品、『宇宙戦艦ヤマト』、『Akira』、『攻殻機動隊』、『ポケモン』、そして『千と千尋の神隠し』まで、日本のアニメがアメリカでどのように受容され、評価・批判されてきたのかについて、極めて精緻に情報を収集してまとめられた本。
 まさに労作で、出版後5年を経過したが、アメリカにおける日本アニメ情報をたどる基本文献として、今後長く活用されよう。
 
 アメリカで出版された文献を中心として、さまざまなメディア情報を収集しており、いわば「文献調査」結果としてまとめられたものだが、私などは、やはりここに適度な現地調査結果を付加してほしかったと思う。
 これは、文献調査結果と現地調査結果のどちらが正しく、どちらが重要かという問題ではなくて、例えば「文献ではこう書かれてあるが、現地取材ではこうこうであり、どうやら現地取材での結果が実情を反映している」、あるいは逆に「現地では○○であるとしきりに言われてきたが、○○○掲載のデータによれば、それは違う」といった内容を適宜盛り込むことで、「文献調査結果の精度をより高める」という観点である。
 
 もっとも、それはいわば自らやるべきことだ。
 近年、海外側からの日本のアニメに関するリポート的な文献も入手しやすくなっているし、いろいろ収集・併読して、あるいは海外渡航の機会があれば可能な限り情報を収集して、自身の著作の精度を高めていくべきだろう。
 そのための礎として、本書は大きな価値を有した「年代記」である。