持永只仁自伝

 
 ●「アニメーション日中交流記 持永只仁自伝」
  著 者: 持永只仁
  出版社: 東方書店
  刊行年: 2006年
  定 価: 2381円
 
 
 
 日本の人形アニメーションのパイオニア・持永只仁(1919〜1999)の「自伝」
 これまで、持永についての著作・資料は、いくつかのインタビュー録のほか、アニメーション史家・小松沢甫氏による自費出版本「持永只仁の足跡」(1985年)と、その増補版(日本アニメーション協会歴史部会機関誌「ANIMAIL 歴史部会版」第2号(2000年)所載)があり、これらがほぼ決定版とみなされていたが、持永本人がこんな分厚い「自伝」を、いつのまに執筆していたのかと、まず驚いた。
 夫人のあとがきによると、他界する直前になって、かつての中国での同士たちに勧められる形で書き始めたものらしい。よく書き残してくれたと思う。
 
 まだ熟読はしていないのだが、謎につつまれた満映満州映画協会)でのアニメーション制作事情や、戦後も日本に帰国せず中国本土にとどまり、新中国におけるアニメーション育成に取り組んだエピソードなど、貴重な内容が満載である。
 ただし、これをもとに研究に発展させるためには、本書があくまで最晩年に至って執筆された本人による自伝であることから、記憶の齟齬やあいまいな点を補正するために、客観的な関連資料との突合せが必要と思われる。
 実際、中国通の某友人によると、満映関連の資料は、中国本土にかなり残されているらしく、映画史・アニメーション史研究家による「再調査」の時を待ち焦がれている、と言えるかもしれない。