花田清輝という批評家

 
 日本における前衛文学の旗手であり、戦後最大の知性とも評された、作家・批評家の花田清輝(はなだ・きよてる、1909〜74)は、1950〜60年代、文学者が大量に映画批評に参入していた時期において、最も精力的に映画批評に取り組んだ一人である。
 しかし、吉本隆明との戦争責任をめぐる議論で「敗北」したことが影響してか、死後現在に至るまで、再評価されているとは言えない。
 
 私がなぜ花田清輝の名を挙げたかというと、彼を含む映画批評を手掛けた文学者の中でも、最も多くアニメーションを批評材料として取り上げ、しかもその批評内容が斬新だったからである。
 特に、1950年代、礼賛される以外になかったディズニー映画について、そのリアリズム志向を「なぜアニメーションであんな記録映画のような映像を作る必要があるのか」と、厳しく批判していた点が印象的だった。
 具体的には、「漫画映画の方法」というタイトルで、雑誌「キネマ旬報」1958年3月下旬号に発表された論考が好例で、これは批評集「映画的思考」に収録されている。
 
 日本のアニメーション批評も、まだ歴史も厚みも「史」を語りうるほどには蓄積していないので、致し方ないのだが、個人的には、花田清輝のアニメーション批評は、研究してみたい題材だ。
 
 以下に添付した画像は、「映画的思考」初版だが、その他、批評集「アヴァンギャルド芸術」と「さちゅりこん」に、アニメーション批評がいくつか収録されている。
 未来社講談社から全集が出ているので、図書館等で閲覧すれば十分だと思う。
 
 ●「映画的思考」
  著 者: 花田清輝
  出版社: 未来社
  刊行年: 1958年