値段史年表

 
●「値段史年表 明治・大正・昭和」
 編 者: 週刊朝日
 出版社: 朝日新聞社
 刊行年: 1988年
 定 価: 1600円
 
 
 
 だいぶ更新が間延びするようになって、紹介したい新刊はけっこうあるのだが、ちょっと毛色の違う図書を紹介したい。
 明治期から昭和60年代までの、218品目の値段の変遷を一覧表で整理した本で、「週刊朝日」での連載をまとめたものであるが、アニメ史や映画史などを含む近現代史研究には基本図書の一つだ。
 つまり、大正時代にアニメーターがもらっていた給与が、当時の所得水準からしてどの程度のものか、戦時中に制作された長編アニメーションの制作費は、現在のいくらくらいになるのかといったことは、本書に載っているさまざまな値段史から、推測することができる。
 
 たとえば、手塚治虫虫プロダクションを設立したのが昭和36年で、当時スタジオに入った山本暎一の給与は「3万円」だったという。山本は、自伝で「あまりに高給なのでびっくりした」という主旨の回想をしているのだが、どのくらいの「高給」だったのだろうか。
 そこで、本書の「公務員の初任給」を見てみると、昭和36年の公務員初任給は「1万4200円」だというから、「3万円」というのは倍以上、現在の水準では40〜45万円というところだろうか。やはり虫プロの給与は破格の水準だったことがわかる。
 
 それに、本書は読み物としても面白い。全紙面が一覧表なのだから、「読む」という性格の本ではないのだが、ソバ、コーヒー、コロッケといった庶民的な食べ物の物価から、家賃、葬儀料、東大の授業料、パーマ料、銀座の地価、おみくじ、ストリップ劇場入場料まで、とにかくあらゆる分野の値段史が載っている。
 
 現在は絶版なので、入手は古書店に頼るしかないが、同じ「週刊朝日」の連載のうち戦後の内容をまとめた朝日文庫版「戦後値段史年表」は求めやすい。