宮崎駿・大塚康生の世界

 
 ●「宮崎駿大塚康生の世界」
  監 修: 宮崎駿大塚康生
  編 者: 銀英社
  出版社: オフィスアクション
  刊行年: 1982年
  定 価: 4500円
 
 
 
 『崖の上のポニョ』公開記念ではないが、宮崎駿関連の少しマイナーな文献を紹介したい。
 ちなみに『ポニョ』、私は非常に楽しく鑑賞することができたが、感想を一言で書くと、「宮崎駿も、監督としては「最晩年」に差し掛かってきたのではないか」という感じか。
 
 さてさて、この文献だが、熱心なアニメファン以外にはまだ無名といってもよかった1982年、宮崎駿大塚康生が関わってきた作品をピックアップして、カラー図版、設定資料、絵コンテを中心に収録し、B5判ハードカバー、318ページという密度の濃い資料集として刊行された。
 刷り部数はわからないのだが、1985年に再版されており、私はこの再版本を、88年頃、大阪市内のアニメショップ「アニメイト」で購入した記憶がある。
 
 収録作品は、『太陽の王子ホルスの大冒険』、『長靴をはいた猫』、『パンダコパンダ』、『パンダコパンダ 雨降りサーカスの巻』、『ルパン三世』第1シリーズから第11話「7番目の橋が落ちるとき」、『ルパン三世』第2シリーズから第145話「死の翼アルバトロス」、同第155話「さらば愛しきルパンよ」、そして『ルパン三世 カリオストロの城』。それぞれ、設定資料や絵コンテ、制作関連資料などが豊富に掲載されている。
 いまや宮崎も大塚も巨匠となり、また特に宮崎作品の絵コンテなど第1次資料の刊行が相次いでいることもあって、現在、この資料集の価値もずいぶん目減りした感があるが、アニメーション研究に入門しようとしていた購入当時の私にとっては、他に代えがたい貴重な資料集だった。
 
 ただ、巻頭に、宮崎駿のオリジナル絵物語『妹へ』が収録されている点は特筆すべきかもしれない。後年の関連文献・資料には、この作品は再録されておらず、本資料集を手にするしかないと思われるからだ。(どこかに再録されていれば教えてください)
 わずか6ページ、17枚の絵と短文で構成された小品だが、障碍をもって生まれた妹と、その妹を助ける兄との、あくまでプラトニックな愛の物語。宮崎ならではのセンチメンタリズムがふんだんに盛り込まれた、極めて印象的な作品になっている。
 以下に、絵と短文を、1枚だけ引用しておきたい。
 
  
  (添えられた文: ひみつの招待状 あした 朝はやく とぶよ )
 
 1度再版されているとはいえ、もともと刊行部数が少なかったと思われるため、現在入手は困難。まんだらけで1、2度見かけた記憶はあるが、初版・美品であれば万単位の価格が付けられている可能性がある。
 
追記:
 ブックマークをつけていただいた方から、紹介した『妹へ』は、モノクロながら、「キネ旬ムック フィルムメーカーズ6「宮崎駿」」に再録されているとのコメントをいただきました。(ちなみにこのキネ旬ムック、私もちゃんと持っていました。注意不足ですね)
 ありがとうございました。