タツノコプロ研究

 
 タツノコプロは、東映動画東映アニメーション)、虫プロダクションなどと並ぶ老舗スタジオだが、他の大手スタジオとは異なり、ほぼ一貫してテレビアニメにこだわり、かつ原作つきではなくオリジナルの作品を多く送り出してきた点で、まさにテレビアニメの可能性をとことん追求してきた、稀有な存在である。その意味では、日本アニメ史の特性に最も忠実に仕事をこなしてきたスタジオと言えるかもしれない。
 その一方で、日本のアニメ史全般からみた総括・評価はまだまだ不十分で、今後の研究対象として大きな期待がもたれる。
 
 そんなタツノコプロ研究の出発点となる文献を、まずは2つ挙げたい。
 
 ●「タツノコプロインサイダーズ」
  著 者: 原口正宏ほか
  出版社: 講談社
  刊行年: 2002年
  定 価: 2000円
 
 
 
 タツノコプロ創立者から、企画、脚本、演出、キャラクターデザイン、作画、美術、撮影、編集、音響、外部の代理店に至るまで、タツノコに関わったありとあらゆる分野の、総勢42名もの関係者インタビューを収録した、圧倒的な内容。加えて、巻末には1965年から77年までに制作された全テレビアニメ作品の、全エピソードの主要スタッフが列記された資料編が盛り込まれている。
 A5判・320ページにわたって、小さな字がギッシリ埋め尽くされ、正直言って一読するのも疲れるが、その情報量と密度からして、これを精読せずして、タツノコプロ研究は始まらないと言ってよいだろう。(実は私もまだ精読していない)
 
 
 ●「ぶたもおだてりゃ木にのぼる」
  著 者: 笹川ひろし
  出版社: ワニブックス
  刊行年: 2000年
  定 価: 1800円
 
 
 
 タツノコで長らく演出を手掛けてきた笹川ひろしによる、自伝的タツノコ史。
 最近、アニメ界のベテランが回想録的な著作を出版する例が多く見られるが、本書はその中でも、文章が非常に読みやすく、かつ面白い。アニメファンではない人にも、読み物としておススメできるほどだ。
 もちろん、新作の企画が立ち上がる時の詳細なエピソードなど、タツノコ史に直結する情報も貴重なのだが、それ以上に、入社してきた新人の印象や仕事ぶりなどの描写も非常に面白い。
 そして、創立者吉田竜夫が45歳で急逝するまでのエピソードは、涙なしには読めない。
 
 
 「ぶたもおだてりゃ」は現在も書店で購入可能だが、「インサイダーズ」は在庫なしということで、古書ルートをあたるしかない。
 
 なお、2冊とも文章オンリーで、作品の図版等がほとんど掲載されていないので、以下の2つのムック・資料集を併せて入手すれば参考になる。
  
 ●「タツノコプロ アニメ大全史」(辰巳出版、1998年)
  まんだらけ等でよく見かけるので、比較的入手しやすい。
  カラーよりもモノクロが多いのが難点だが、図版豊富。
 ●「タツノコプロ30周年記念全集」(バンダイ、1993年)
  2巻セットの資料集で、カラー図版とスケッチ類満載。やや入手困難。
 
 以上4冊を手元に揃えた時から、タツノコプロ研究は始まる。