「Before Mickey」  「Of Mice and Magic」

 
 どちらも、やや古くなったが、アメリカ・アニメーション史研究には欠くことができない基本文献。
 同時に、邦訳が最も待たれている文献とも言えよう。(もっとも、「待たれている」うちに、ずいぶん時間が経ってしまった。だいたい日本は、海外文献の邦訳が少なすぎる。そのわりに、「現代日本のアニメ」という謎本の邦訳が出たりする)
 
 
 ●「Before Mickey」
  著 者: Donald Crafton
  出版社: The University of Cicago Press
  刊行年: 1982年(1993年再刊)
 
 
 
 タイトルのとおり、アメリカでミッキーが登場するまでの、初期アニメーション史についての研究書。アニメーションの起源としての映像玩具にはじまり、ブラックトンの『幽霊ホテル』考察、そして、「最初のアニメーター」としてエミール・コールを挙げ、マッケイ、ブレイへと進んでいく。
 ミッキー登場の瞬間というのは、映画とアニメーションが明確に区分された瞬間であり、「ミッキー以前」というのは、今でこそマッケイやブレイなどの「アニメーション作家」の歴史が語られているが、当時は明確に区分されていなかった。それほど、「映画スター」「アニメ・スター」としてのミッキーのインパクト・影響力は大きく、アニメーションが成すべき創作性が、はっきりと提示されたのだ。
 
 
 ●「Of Mice and Magic」
  著 者: Leonard Maltin
  出版社: Plume
  刊行年: 1980年(1987年再刊)
 
 
 
 アメリカ・アニメーション全史。もちろんディズニー以外の各スタジオやクリエイターの仕事にも詳しく、サイレント時代から、フライシャー、ヴァン・ビューレン、UPAなど、国内文献ではいまだに情報が少ない事項についてもページが割かれている。また、巻末の作品リストも充実しており、利用しやすい。
 ちなみに、著者のMaltinは、先ごろ発売されたディズニー「トレジャー缶」DVDシリーズの監修を務めたことでも知られる。
 
 
 どちらの文献も、アマゾン等で購入可能。