編 者: 昼間行雄、権藤俊司、編集部
出版社: フィルムアート社
刊行年: 2002年
定 価: 2000円
「ユーロ・アニメーション」と銘打ってあるが、加えてロシアとカナダが扱われており、実質的に、アメリカとアジア地域を除く、主なアニメ生産国の総説・ガイドブックという仕様になっている。
余談っぽいが、ロシアはともかく、北米大陸のカナダが入っているのは、カナダのアート系アニメーション界を長年引っ張ってきたNFB(カナダ国立映画庁)アニメーション部門の実質的な創立者がノーマン・マクラレン(スコットランド生まれ)であり、以後この組織から出てきた作家は、チェコやオランダなど、ユーロ地域出身が多いためである。
「代表的作家」として選定された12人も非常にバランスがよく、国別の解説も限られたページの中で密度が濃く、ユーロ・アニメーション入門書として、申し分ない。この地域のアート系アニメーションに興味のある人は、必ず手元に置くべきである。
あえて難を言えば、著者を多く抱えすぎて、肝心の作家や国別の解説が書き足りないと、おそらく著者が感じているのではないかという点である。
その意味では、エッセイの域を出ない何人かの著者の文章や、座談会などを割愛して、1ページでも2ページでも、重要な作家や国の解説・基本的なデータ量を増やして欲しかった。
したがって、より高度な研究に進むためには、巻末に掲げられた参考文献リストを活用する必要がある。