アメリカの作品事典2つ

 研究書や論集ではなく、事典っぽい文献ばかり紹介しているが、すべての研究の基礎ということで。
 最近、アメリカで出版された作品事典を2つ紹介する。
 
 ●「The Animated Film Encyclopedia」
  著 者: Graham Webb
  出版社: McFarland & Campany, Inc.
  刊行年: 2000年
 
 
 
 サブタイトルは、「A Complete Guide to American Shorts, Features, and Sequences, 1900-1979」とあり、その通りの内容なのだが、B5判ハードカバー、約630ページという大部の本である。内容も凄く、図版は皆無で、国語辞典のような体裁で作品名がアルファベット順に並べられ、制作年、監督など主要スタッフなどが、ギッシリと列記されている。
 ただし、必ずしも網羅的なものではなく、掲載作品には一定の限度があるようで、例えば、世界初のコンピュータ・アニメーションといわれるジョン・ウィットニーの「カタログ Catalog」(1961)のような自主制作的な作品は外されているようだ。
 
 
 ●「Television Cartoon Shows」2d ed. Vol.1, 2
  著 者: Hal Erickson
  出版社: McFarland & Campany, Inc.
  刊行年: 2005年
 
 
 
 2巻セット。アメリカでテレビアニメシリーズが制作・放映されはじめた1949年から2003年までの、アメリカのテレビアニメ事典というべき内容で、やはりB5判ハードカバー、1巻あたりのページ数は約500ページと、これまた大部の本である。
 こちらは図版も少しだが掲載されているが、作品プロフィールの情報量は前者よりもずっと多く、主要制作スタッフのほか声優名も載っており、作品解説も充実している。
 注目すべきは、日本製アニメもたくさん載っていること。つまり本書は、アメリカ製テレビアニメ事典ではなく、「アメリカで放映されたテレビアニメ事典」なのだ。
 例えば「Astro Boy」の項には、制作は「Osamu Tezuka」、アメリカ版監修は「Fred Ladd(フレッド・ラッド)」、そしてアメリカ版の声優まで記載されている。(ただし、向こうにとっての原書である「鉄腕アトム」は「テツアン・アトマ」となっている)
 したがって本書は、アメリカでの日本アニメの放映状況などを探る基礎資料としても活用できるだろう。 
 逆に、かつて日本で多数放映されたアメリカ製テレビアニメのプロフィールを調べる場合も大いに役立ち、実際私は、今執筆中の本で、そういう使い方をしている。
 
 いずれの本も高価ながら、新品をアマゾン等で入手できるが、ブックファインダーを使って、できるだけ安く購入したい。